芸術、作品について

作品として息を吹き込まれ息づいたいのちを、価値とは呼ばなくても、生まれたことを支えるものはなにか、とまじめに考えると。
例えば、賞は名札としてわかりやすいけれど、一年、数年、長くても十年ですっかり忘れられてしまう虚しい商業的な興業にすぎないと思う。なら、作品のいのちはなにによって?

作品そのもののいのちの響きによって。作品を授けられた作者の込めた思い、感動、愛情の深さによって。偶然に出会えた受け取る人の感性、感受性との、響き合いの深さによって。もう、掛ける人数で計算できるような物量では計り取ることのできない、愛によって。作品がその人を愛し、作品が愛される。

その時は、愛しあう人と人の関係のように、命が断ち切られ、離れ離れとなり、消えても、消えずに続きつづけるもの、とわたしには想える。

人間の寿命、百年にとどかない時のものさしでは、はかりようがない。文化、芸術、作品、人の、いのちの交わり、美は、そのようにありえる時を感じてしまう、生と死の彼方へかかる天の川の橋のような、かけがいのないもの。