感動は感情。パスカルの『パンセ』

小説の展開と描写と叙述の斬新さと精緻さ、短詩型の優れ透徹した目と意思に徹した写生、抒情の旧弊をモダニズムの翻訳で超克したと踏み迷い驕り墜ちた現代詩の知性偏重。それだけではその主張を表し得た作品でも読むと虚しい。作品にあいにゆくのは澄み透って響かずにいられない心の切実さを探すから。

文学表現は類人猿としてのわずかな知性をつつみひろがる、感性、感受性の無限、無限、未知のゆたかなときめき。
文学の真珠は、どんな芸術ともおなじ、ひとの感情。

底の底にみえずとも体温をもちふるえている感情の芯を、伝えてくれる作者をわたしは敬い作品を愛しつづけます。

感動は感情、わたしにとっては。

知性は作品を作品、海を海とするための最低限の防波堤。コンクリートであるより砂浜であれるなら、作品が潮騒そのものになれるような。

パスカルのパンセは二十歳の頃からずっと変わらず好きな、潮騒

文学の海を、波のあおを、愛し、みつめ、耳澄ませ、磯の香かすかに、はだ海風にくすぐられ、つつ。

アシであるより、生まれたのだからどうせなら、考え、感じふるえる、花で、あれたなら。
(人間は考える葦(アシ)である。パスカル、「パンセ」)