「アイヌ神謡集」と「知里幸恵ノート」(4)アイヌのupopo(ウポポ)、神歌

 
 

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知里幸恵(ちりゆきえ)は、金田一京助アイヌのウポポ・神歌について「知里幸恵ノート」で次のように記しています。

参照資料「知里幸恵ノート」北海道立図書館所蔵北方資料デジタルライブラリー
「知里幸恵ノート」北海道立図書館所蔵北方資料デジタルライブラリー

「upopo(ウポポ・神歌)やRimse(リムセ・その踊り唄)はたくさんありますが何の訳(やく)かわからないのが多々ございます。とにかく、これはみんな神を讚美する一つの美しい詩であると私は思います。私達の先祖は本当に詩人であったと思います。」

(北海道立図書館北方資料デジタルライブラリー画像95)

upopo(ウポポ)、祭の夜などに婦人たちによって唄われるアイヌの神歌。

知里幸恵ノート」のウポポ(神歌)日本語訳からもっとも好きなものを抜粋します。

「神様がお帰りになった
美しい音をたてて…。」

「太陽の上から神様が岩のそばへお降りになりました
私等は岩の側の美しい音をききました。」

(北海道立図書館北方資料デジタルライブラリー画像88)

彼女の弟の知里真志保も「知里真志保著作集」(平凡社)所収の「アイヌ民族研究資料(第二)」の9で、「知里幸恵ノート」をもとに整理註釈してローマ字日本語対訳を著しています。もっとも好きなものを抜粋します。

(3)
葦原(あしはら)が光る美しく光る
後の丘へ神様が降りた
後の丘で美しい風の音が聞こえた。

知里幸恵と姉を慕った真志保の二人は、人間ばかりではなく、森、自然、宇宙、あらゆる生きもの、あらゆるものに、謙虚に耳を澄ませ、美しい音、はるかな声を聞き取ることができる、優れたアイヌの子として、生き、その豊かさを伝えてくれている、大切にしたいと私は思います。