創作。旋律、色彩

ショパンピアノ曲はなんど聴き返しても、どうしてこんなにきれいな旋律、生まれたんだろう、と。
求めつづけ、探しつづけ、創りつづけ、見つけられない嘆きのある日に、なぜか気まぐれにふと、ふりそそぎ訪れてくれた、おどろきと喜びと、ときめきと、疲れとかなしみがふるえていて、とてもきれい。

作品の、もっとも大切な、なくてはならない旋律、色彩、かたち、詩句は、無から天才が創り出せるものではなくて、どこからともなく降りそそぎ訪れてくれる、知らずに待ち望まれていた、なくてはならない、それだけその時にしかあらわれでないものを、受けとめ、作品のかたちにして、伝えるのだと思う。

「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌフォーヴィスムキュビスムから現代へ」展。アーティゾン美術館。
セザンヌから今も創作中の日本の画家まで、見ごたえのある絵画展でした。具象、抽象、かたち、線、色彩、絵とは?美とは?と想いが豊かになります。

すでにあり権威、常識、流行りだと教えられ、同調を求められ、はめ込まれがちな、形は形、優れたものと学び受けとめたうえで、いったん真っ白まっさらに塗り消した画布、空間に、形と色彩、表現の美を、浮かびあがらせ、驚きときめき、感動を生み出せる創作表現が、ジャンルの境界など超えて好きです。

図録で一枚一枚の絵を見返し思い返すと、絵は一枚それだけしかない絵、原画は画家の筆使いと呼吸と眼差しそのものが塗り込められ宿り今も息していて、複製技術がどんなに向上しても伝えようがなく、圧倒的に良いそれだけしかない姿であるのだと、沁みるように感じます。